ドライジーネのTyrell IVEレビュー

四国のIVE EMOTIONさんがリリースした新型フォールディングバイク「IVE」。

お客さんから「どうなんですかね~?」なんて聞かれる事があったのですが、どうにもこうにもデザインにピンと来る物がなかったので、取り扱いを保留しておりました。

しかし、見た目だけの判断で食わず嫌いもいけませんねえ、と思い立ち試乗車を借りてみる事に。

普段、MOULTONやBikeFridayなど、ちょっと尖った自転車に乗るワタクシの感覚からして、少し手厳しいレビューとなるかもしれませんが、その辺り差し引いて参考にしていただけると幸いです。

見た目の部分


試乗車が到着してみると、僕の好きなワインレッド系の色で、やや好印象なIVE。
写真や画像で見るよりも、車体がおおきく感じます。



カタログなどでアンバランスに見えたのは、リアセクションが妙に長く見えて、フロントの部分の凝縮具合との差がある事。

リアセクションが長く見える要因は、クランクの後ろ方向へのオフセットによる事と、スイングアームのデザインから来る物でしょう。

リアセンター(クランク中心からリアハブ軸中心までの距離)は標準的な長さです。しかし、スイングアームの始点がシートチューブから始まっている様に見えるので、リアセクション全体が長く見えます。

それから、BOX形状のパイプを使ったスイングアームが、細めに見えるのも、後ろへ長く見える要因の一つと思われます。

そんな訳でこのIVE、真横からより、斜め前くらいから眺めた方がリアセクションがあまり長く見えず、僕にはカッコよく映るのでした。

※最下段の追記のように、後ろにサドルを引くと、後ろ方向へのウエイトが増し、バランスが良く見えたりいたします。試してみてね。

折りたたみ構造


折りたたみ方式は、BD-1とBROMPTONをミックスしたようなもので、特に目新しさは感じません。
しかし、発展的な機構としては、ハンドルに装備されたリアセクションの「ロック解除レバー」が新しい発想だと思います(他にもあるのかな?)。



レバーを引くとワイヤーと連動して、ご覧のように簡単にロックが解除され、リアセンションが折りたたみ状態となります。これだと腰をかがめる事なく、すばやく折りたたみが可能です。

ただ、折りたたむ際はカセットスプロケットの中段あたりにチェーンをセットするという制約があります。
これは、折りたたんだ状態から元の状態に展開する際、チェーンが外れないようにする為の儀式です。



ハンドル折りたたみ部分に目を向けると、かなりガッチリとした作りになっています。

更に折りたたみヒンジ部分はセーフティーに考えられていて、不用意にロックレバーが下りても、それからワンアクションレバーを引かないと折りたためない構造になっています。



フロント部分については、FXと同じくフロントフォークを90度近くに曲げて折りたたみむ構造になっています。

FXから進化している部分としては、安全ロックピンに新しい仕組みが採用されている事です。
これは、ピンの真ん中にあるボタンのような物を押すと、簡単にピンを外せるという物です。
これはなかなかナイスアイディア。
FXでは、ピンのはめ込みにコツが必要だったり、走行時にガチャガチャと音がしたりしていましたが、これだとスムーズで簡単に、しかもうるさい音も少ない構造になりました。

このピン、試しにFXにも取り付けてみましたが、無改造で使えそうです。

折りたたんでみたところ


さて、これは駐輪モード。
BROMPTONと同じようなフォルムですね。



完全折りたたみ状態。
結構コンパクトです。この状態もBROMPTON似といった所でしょうか。



上から見ると、BROMPTONほどお行儀よく折りたたまってはいませんが、それなりにコンパクトにまとまっていると思います。

走らせてみて

さて、折りたたみ部分はよくできていると思えるこのIVE、走らせてみると、がっちりしたフレームやヒンジの作りである事をうかがいしれる、しっかりした物にまたがっているという安心感を感じます。

そして乗り心地味はと言うと、アップライトポジションならではの、リアタイヤからの突き上げが心配な所ですが、そこには衝撃緩衝用のゴムがついていますので、不快な事はありませんでした。

でも、どかっと座っているのでサドルがもう少し柔らかめの方がよいのではないかと思います。
僕はお尻が痛くなるのが早く訪れました。

更に走らせてみると、通常スピード域からペダルを止めると、スピードがグンと落ちる事を感じました。
でも、ホイールがよいからでしょうか、そこらの惰性が長く続くフィーリングは気持ちよく感じます。

タイヤをスリックに変えるともう少し違ったフィーリングでしょうが、このタイヤはきっと実用性を考えたチョイスなんでしょうね。

ポジションのセッティング


最後に、IVEのハンドルステムは、通常の突き出しのあるステムに交換したり、多少ながら高さ調整ができるようになっています。

突き出しのあるステムに交換すると、折りたたんだ時の幅がその分、広くなってしまうのがデメリットですが、アップライトポジションゆえの後輪加重をもう少し和らげると、もっと機敏で楽しい自転車になるんじゃないかと思います。

※最下段の追記のように、サドルを後ろに引くとペダリング効率が変わり、乗った印象もかわります。試してみてね。


その辺りは、乗られる方のお好み次第です。

どんな人に似合うのか?

折りたたみの部分について、良く考えられて、良く出来ています。
メーカーはとても良心的ですので、そんな安心をお求めの方にはお勧めです。

お勧めの方
・メーカーの良心さ
・日本の心配りのある物作りに共感する方
・あくまでものんびり乗ることをお考えの方
・このデザインが好きな方
・安っぽいのはイヤな方
・ポジションの変更が出来るので、スポーティーな自転車へ変貌させたい方
・ジャパンメーカーを応援したい方

逆にお勧めで無い方
・小径車と言えども、ある程度の高速走行性能を考える方(追記により多少改善可能
・山岳路も視野に入れたライドをお考えの方
・ラテンな味付けが好きな方
・高度なサスペンションが付いてないとイヤな方
・男らしいデザインが好きな方
・超軽量な車体をお求めな方
・BROMPTONやBIRDYを真似ている所がイヤな方
・外国製が好きな方

私的総論

この自転車は、IVE EMOTIONの廣瀬さんが「18インチの自転車を作ってみたかった」という事で誕生しています。
もうその事は5年位い前に聞いた話しです。つくづく、製品作りっていうのは実に時間のかかる根気のいる仕事なんだろうなと思います。

最初IVEを見た時、Tyrellのスラントデザインは踏襲せずに、シンプルなダイヤモンドフレームが採用されている事にやや拍子抜けした事を思い出します。

それから、今回の試乗車をお借りして、その折りたたみ方式がやたらとBD-1やBROMPTONに酷似した物になっているのも物足りなさを感じました。

とは言っても、僕が取り扱っているBikeFridayTikitがあまりにも特殊なギミックで折りたたみをするので、IVEが特別面白く見えないのかもしれません。
しかし、そもそも折りたたむ事が面白いかどうか、なんて事は世の中どうでも良い事なのかもしれませんね。

IVEが気になる方は、ぜひ試乗車が置いてあるお店で試乗してみてくださいね。




追記

シートチューブがBBより前に来ているデザインの為に、サドルの前後位置によっては、前のめりな乗車ポジションになる場合があります。
その場合に、サドルを後ろへ引くセッティングする事で、ペダルに無駄なく力が伝達できるようになります。
これで、私も随分IVEが好きになりましたよ。

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